新しい冒険。
ひとつの旅が終わりを迎えた。
彼とは去年(2022年)の夏から今後の去就について話し合いを行っていた。
そして7月の名古屋公演が延期になってしまったので、その振替公演までは続けよう、と約束していた。
そうじゃなければ昨年10月1日のBillboard Live YOKOHAMAがラストになっていたかもしれない。
1月26日(木)渋谷PLEASURE PLEASURE「fhána New Year Live 2023 〜あけおめの集い〜」は、事実上yuxuki wagaの卒業公演として用意した舞台。
ギリギリで抑えた会場なので平日かつキャパも小さめになってしまったが、ゆーきくんの脱退が正式に決まってから残されたライブが既にチケットが発売されている名古屋の振替のみというのは申し訳なく、きちんとした機会を作りたかった。
しかもこれは僕の自費での開催。
けれども、サポートメンバーから照明、音響、楽器スタッフまで、通常の大きめのワンマンライブと変わらない環境を整えた。
最高の舞台で彼を送り出したかったからだ。
ありがたいことにチケットは即完したが、利益はゼロ。持ち出し覚悟でゴリ押しで開催した。
結果、無理をして開催して良かったと思える最高にエモいライブになった。
1月29日(日)「fhána Cipher Tour 2022」名古屋振替公演は、昨年の7月からの振替公演ではあるものの、yuxuki wagaのfhánaとしての本当のラストライブになった。
けっして大きな声では言えないことは重々承知しているが、結果として名古屋が延期になったことによって、この物語は最高の結末を迎えることが出来たんじゃないかと思う。
1月27日夜に政府から、イベント開催での規制の緩和が発表された。これにより「声出し」も可能になるとのことだった。
しかし実際のところは各自治体や会場の方針と判断に委ねられている。
1月29日の公演に関しても、事前に確認した際も、ライブ当日朝に確認した際も、自治体と会場の方針が定まっていないためまだ「声出し不可」とのことだった。
しかし最後の望みをかけて開演1時間前に再度交渉を行ったところ、なんと会場から声出しの許可が降りた。
そして、ついに幕を開けた名古屋振替公演では、3年ぶりに、ふぁなみりーのみんなの声を聴くことが出来た。
「星屑のインターリュード」、「青空のラプソディ」、3年前まではこうだった!fhánaのライブが帰って来た!と、みんなの声を聴いて泣きそうな気持ちになった。towanaはCipherの歌い出しでも、星屑のイントロのコールでもすでに泣いていたけれど…。
「愛のシュプリーム!」は、この日初めて完成した。
"Sing Along"という歌詞で始まるのに、今まで一度もみんなと一緒に歌えていなかった。
この曲のデモを作った2019年に思い描いていた光景をようやく見ることが出来た。
「Ethos Choir Caravan feat.fhánamily」ではようやく約束を果たすことが出来た。
パンデミックが始まり、ライブで一緒に歌うことが出来なくなったから音源で一緒に歌いたいと思って、みんなからコーラスを募集したこの曲。
いつかライブ会場でみんなで大合唱したいと描いてきた夢がついに叶った。
そうやって、「拍手」だけでなく、みんなの「声」で彼を送り出すことが出来たのは、本当に幸運だったし、神様からのギフトのように感じた。
名古屋振替公演の前、ゆーきくんとは「これはあくまでCipherツアーの振替公演だし、脱退云々は関係なく普通にやろう」と話していた。
とか言っちゃってたのに……、ふぁなみりーのみんなの声が大きな力になって、結局エモエモなライブになってしまった。
終演直後の楽屋では、「こんなはずじゃなかった」、とメンバーみんな泣きながら笑っていた。
以前何度かインタビュー等で話している通り、ゆーきくんからDMをもらったことが一つの切っ掛けとなり、fhánaは始まった。
それは物語の大きな分岐点であり、彼の存在がなければ今のfhánaも、今の自分もなかっただろう。
結成当時夜な夜なSkypeで通話しながら一緒に曲を作ったこと。
ともに沢山のライブをして、沢山の場所に行ったこと。
僕のあまり詳しくないジャンルについてや、新しいシーンについて教えてもらったこと。
どうでもいいくだらない話をして笑ったこと。
そして……美味しい餃子を作ってくれたこと…ハンバーグのレシピを教えてくれたこと…。
彼には感謝しても感謝しきれないが、とくに餃子については、最大級の"ありがとう"を伝えたい。
結成から12年、そしてデビューから10年、僕たちfhánaとふぁなみりーは「旅」を続けてきた。
そしてライブの場で合流し、同じ時空を共有し、喜びを分かち合ってきた。
そんなふぁなみりーのみんなと出会えて、僕たちは幸福だと思う。
そしてゆーきくんを大きな愛を持って送り出してくれて本当にありがとう。
僕たちみんなが築いてきた歴史は消えない。
それは絆だ。
この旅は今一つの終わりを迎え、これからは「冒険」が始まる。
これから、嬉しいことや、楽しいことや、つらいことや、悲しいことや、感動することや、たくさんの物語が、僕たちを待っているだろう。
新しい冒険に挑む、fhánaのことも、ゆーきくんのことも、これからも応援よろしくお願いします。
ふぁなみりーと僕たちの、新しい冒険の幸運を祈って。
佐藤純一(fhána)